順天堂医学
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特集 癌再発とターミナルケア
病理解剖例から見た癌の再発と進展
--消化管を中心に--
平井 周
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1996 年 42 巻 3 号 p. 281-289

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抄録

先端医療や最新医学と呼ばれる『治す医療』の進歩と同時に, 根治し得ない悪性腫瘍患者に対する『Terminal Care』や『Palliative Care』という概念が最近積極的に唱えられている. しかし病理学は癌の末期医療に関して, Pre-terminal Phaseにおける外科病理学的関与ほどの直接的な診断. 治療協力は困難である. 従って, 病理学はPost-mortal Phaseにおいて, 他の患者への治療のために『病理解剖学』の見地を以て間接的に『Terminal Care』の一助となることが必要であると考えられる. 今回筆者は悪性腫瘍の病理解剖症例 (1989年-1993年の583例) を用いて, 消化管を中心に悪性腫瘍の頻度, 再発や進展様式等について若干の検討を試みた. 【結果】 (1) 胃癌は116例で, 保存的治療 (非切除症例) が48例 (41.4%), うち45例 (93.8%) には他臓器転移が認められ, 残りの3例には重複癌が見られた. また, 48例中臨床経過の判明した38例の平均生存期間は6.0ヵ月であり, 胃癌単独の切除症例の平均生存期間 (20.1ヵ月) と大きな差が見られた. (2) 胃癌切除症例は67例で, 転移が43例 (64.2%) に, 局所再発が18例 (26.9%) に見られ, 局所再発例は全例転移を伴っていた. (3) 胃癌根治切除症例 (24例) 中16例に重複癌が見られ, うち10例が死因となっていた. (4) 大腸癌非切除症例12例のうち, 内科的局所治療が施行された症例 (6例) の平均生存期間は6.2ヵ月で, 対症療法にとどまった症例 (6例: 3.5ヵ月) とは約3ヵ月の開きがあるが, ともに切除症例 (33例: 31.4ヵ月) とは大きな隔たりが見られた. (5) 胃癌・大腸癌症例では, 遠隔転移の有無は局所再発の有無に比して, 術後生存期間への関与が強いと考えられた.

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© 1996 順天堂医学会
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