順天堂医学
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原著
大腸癌に及ぼす脾摘の影響に関する実験的研究
三上 陽史
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1998 年 44 巻 2 号 p. 180-186

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抄録
目的: 消化器癌における脾摘出 (脾摘) の時期の影響を検討する目的で1, 2-Dimethylhy-drazine (DMH) 誘発ラット大腸癌モデルの病理組織学的・免疫学的検索を行った. 対象と方法: DMH誘発Wistar系ラット大腸癌モデルを用い, 脾摘の時期によりDMH皮下注1週前脾摘群 (I群), DMH皮下注・脾摘同日群 (II群), DMH皮下注5週後脾摘群 (III群) に分け, 病理組織学的・CD4・CD8・Natural Killer (NK) 活性の面から検討した. 結果: 癌発生率はI II III群とも100%であった. 1個体あたりの平均癌発生個数はI群5.4個・II群6.6個・III群4.6個と各群間に有意差を認めなかったが, 長径5mm以上の大きな癌は1群40%・II群55%・III群75%, 大腸筋層以上に及ぶ進行癌はI群27%・II群21%・III群56%とIII群で有意に多かった (p<0.05). また, 組織学的には低分化型がI群8%・II群9%・III群47%とIII群で有意に多かった (p<0.05). NK活性は脾摘1週後でI群5.8±1.2%・II群5.3±1.9%・III群3.7±0.5%であり, 脾摘前の26.5±11.2%と比較して各群とも有意に低下し (p<0.05), III群においてより低下傾向を認めた. 脾摘5週後ではI群II群III群ともに脾摘前値より低値であったが有意差を認めなかった. CD4は脾摘1週後・脾摘5週後ともに群間に有意差を認めなかった. CD8は脾摘1週後では群間に有意差を認めなかったが, 脾摘5週後ではIII群において高い傾向を認めた. 結論: DMH投与前, 投与同時の脾摘は癌の発生, 発育に対する影響が少なく, DMH投与5週後の脾摘は癌の発育に対して促進的に作用することが示唆された.
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© 1998 順天堂医学会
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