抄録
目的: 脳動脈瘤の治療は顕微鏡下の開頭クリッピング術が最良の治療法とされているが, 解剖学的難度の高い動脈瘤に対する手術は危険性が高い. 外科的開頭クリッピング術が解剖学的な理由から困難な脳底動脈先端部動脈瘤に注目し, 動脈瘤の大きさ・頚部の広さなど, われわれの規定した基準を満たした症例に対して, 動脈瘤内腔充填術を行った. 本法の適応・手技, ならびに問題点について検討し, 若干の文献的考察を加えて報告する.
対象: 対象は脳底動脈先端部動脈瘤5例で, 破裂動脈瘤4例・未破裂動脈瘤1例である. 性別は女性3例・男性2例で, 年齢は49歳から76歳, 平均年齢62.2歳である.
方法: 患者は麻酔科医により気管内挿管され, ヘパリンを全身投与. Seldinger法にて左右の大腿動脈にそれぞれ7Fと4Fのintroducer sheathを留置し, 離脱式プラチナコイルを用いて動脈瘤内腔充填術を施行した.
結果: 超選択的造影・動脈瘤造影で破裂部位と考えられるblebは出血例4例中3例に確認された. 穿通動脈が動脈瘤から分岐している症例は確認されなかった. 5例とも, 治療後1ヵ月以内に神経学的障害を残すことなく独歩退院した. 6ヵ月から18ヵ月 (平均9ヵ月) の経過観察期間で, 各症例のKernofsky performance statusはすべて100%であった.
結論: 脳底動脈先端部動脈瘤の血管内治療5症例の経験を報告した. blebは出血例4例中3例に確認され, 開頭クリッピング術の際に問題とされる穿通動脈が動脈瘤から分岐している症例はなかった.