順天堂医学
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特集 スポーツ医学
内科疾患に対する運動療法
坂本 静男中嶋 佳子田中 健毅相沢 邦彦田中 洋子飯島 敏彦
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1998 年 44 巻 3 号 p. 231-240

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抄録

これまでの内科的疾患の治療の中心は, 薬物療法であったが, 最近では食事療法とともに運動療法が注目されるようになってきている. 特に生活習慣病 (以前の成人病の概念に近い) に対する治療として, 注目されてきている. またこの数年来の国民医療費の急激な増大から, 保険医療費の漸減といった観点からも重要視されている. 確かに生活習慣病の原因の多くは, 不適切な食事摂取内容と運動不足とが主たるものである. そのような背景もあり, 内科的疾患特に生活習慣病に対する運動療法が実施されてきている. 運動トレーニングを行うことにより, 循環器系・呼吸器系・内分泌系・筋骨格系などに有益な効果が得られるが, その効果を利用するのが運動療法である. 糖尿病に対する運動療法はかなり以前より実施されており, 運動実施によりインスリン感受性亢進が得られると考えられている. 最近保険適用になったこともあり, 高血圧症に対する運動療法実施も今後増えていくように思われる. 高血圧に対する運動の効果発現機序はいまだ明らかではないが, カテコラミン・タウリン・プロスタグランディンEなどの関与が推測されている. 小児より中高年者までの肥満・高脂血症・脂肪肝の増加により, 脂質代謝異常に対する運動療法は, 今後ますます重要視されると予測される. 脂質代謝異常に対する運動の効果発現機序には, LPL・LCATなどが関与していることが考えられている. これらの内科的疾患特に生活習慣病に対して運動療法を行っていく上で注目すべきことは, 運動強度は中等度 (50-60% VO2max, ニコニコペース) が最適であることである.

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© 1998 順天堂医学会
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