順天堂医学
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原著
医薬分業における医療効果向上の検討
福島 紀子
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1998 年 44 巻 3 号 p. 294-304

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抄録

目的: 医療制度の中の薬局・薬剤師の機能として, 薬歴管理や服薬指導を医療効果の向上に役立たせるために, 解決すべき問題点を明らかにすることを目的とした. 対象と方法: A市薬剤師会に所属している薬局に勤務する薬剤師を対象に, 1996年10月から11月にかけて, 留め置き法で, 自己記入式調査票を用いた調査を行った. 薬局238店のうち191店から回答が得られ, そこで把握できる薬剤師441名から391名 (回収率88.7%) の回答を得た. 結果: 薬歴管理や服薬指導に対する取り組みに薬局の形態による差が示された. 調剤を主に行っている薬局の薬剤師は薬歴簿に記入する項目が多かったが, 医療効果を高めるためには不足している部分も見られた. 服薬指導を行うにあたっては薬歴簿が有効利用されていたが, 患者の病態についての理解など薬剤師職能の変化に応じた教育が課題であった. 医薬品の販売を主に行っている薬局, 調剤と販売を同じくらいの規模で行っている薬局では薬歴管理が不十分な面が見られ, 薬歴管理の有効利用の方法, 新しい医薬品情報の獲得が今後の課題となった. 結論: 医薬分業の体制下で, 医療効果を向上させるためには, 薬局の形態による課題の解決を図らなければならない. 薬剤師が行う薬歴管理を徹底させることと服薬指導を行うにあたっては薬歴の有効利用, 新しい情報の入手, 医療関係者との連携についての課題があることが示された. その対応として適切な教育研修の充実・連携のための協議会の利用を提言した.

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© 1998 順天堂医学会
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