順天堂医学
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原著
大腸内視鏡検査における偶発症と対策
冨木 裕一鎌野 俊紀林田 康男坂本 修一武川 悟川瀬 吉彦石引 佳郎鶴丸 昌彦
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1999 年 45 巻 2 号 p. 253-259

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抄録

目的: 教室の大腸内視鏡検査における偶発症の実態を把握するとともに, 偶発症が発生した原因とそれに対する治療, さらに対策について検討した. 対象: 1989年から1998年に施行した大腸内視鏡検査5415例および, そのうち内視鏡治療を施行した1710例を対象とした. 方法: 偶発症の定義は, 前処置から大腸内視鏡検査終了後1ヵ月までに発生した合併症とし, 偶発症が疑われ, それを確認するために観察を行った場合も偶発症として扱った. 結果: 教室の10年間の大腸内視鏡検査に伴う偶発症は5415例中19例で, 頻度は0.351%であった. 前処置・前投薬に伴う偶発症は6例 (0.12%) で, 呼吸抑制が3例 (0.06%), イレウスが2例 (0.04%), 縮瞳が1例 (0.02%) であった. 内視鏡観察に伴う偶発症は認められなかった. 内視鏡治療に伴う偶発症は内視鏡治療1710例中13例 (0.76%) で, 12例が出血であった. 穿孔例および輸血や開腹術を要した例はみられなかった. 結論: 偶発症を完全に回避することは不可能であり, CF前に十分なインフォームド-コンセントを行うとともに, 常に偶発症を意識して検査を行うことが必要である. また, 前処置は, 各症例に適した方法を選択し, 前投薬はconscious sedationを心がけて投与することが望ましい. 内視鏡治療は正確な適応判定が重要で, EMRによる手法や留置スネアの使用が有効である. また, 切除後の予防的クリッピングも効果的と思われる. そして, 不幸にして偶発症が生じた際, いかに誠意ある迅速な対応ができるかが医療トラブルを避ける上でも重要である.

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© 1999 順天堂医学会
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