順天堂医学
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原著
石灰化を伴う乳癌の広がり診断の検討
-切除標本の軟X線写真 (specimen radiogram) と病理所見の比較検討--
鈴木 賢鈴木 文直白石 昭彦片山 仁
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1999 年 45 巻 2 号 p. 240-252

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抄録

目的: 石灰化を伴う乳癌の広がり診断の向上のために切除標本の軟X線写真 (マンモグラムの反映) 上の石灰化の範囲 (以下Sと略) と病理学的な癌の進展範囲 (以下Pと略) を比較検討する. 対象: 乳癌手術症例で切除標本の軟X線写真と病理標本の比較が可能で, かつ術前のマンモグラムで石灰化だけが認められた15例と腫瘤像外に石灰化が認められた14例を対象とした. 方法: 病変範囲を比較しS<P (20mm未満), S≪P (20mm以上), S≒P, S>Pに分類, 石灰化の分布密度は密, 中程度, 散在に分類, 形状は顆粒状と桿状・不整形に分類し検討した. 結果: 1) 病変範囲の比較では48%で石灰化の範囲を越えて癌が進展していた. i) 石灰化だけ症例はS<P4例, S≪P4例, S≒P7例, ii) 腫瘤像外に石灰化を伴う症例はS<P5例, s≪P1例, S≒P4例, S>P4例であった. 2) 石灰化の分布密度・形状ではi) 散在と分類した症例は13例で, 石灰化だけの乳癌は6例あり6例中5例が石灰化を越えて癌が進展していたが, 腫瘤像外に石灰化を伴う乳癌では7例中4例が石灰化の範囲内に癌が留まっていた. ii) 顆粒状のみの石灰化と分類した症例は5例で, 石灰化だけの乳癌は2例であり, いずれも石灰化を越えて癌が進展していた. 一方, 腫瘤像外に石灰化を伴う乳癌では3例中2例が石灰化の範囲内に癌が留まっていた. 結論: 1) 48%で石灰化を越えて癌の進展範囲が認められ, マンモグラムの石灰化だけでは乳癌の広がり診断は難しい. 2) 石灰化の形状・分布密度との関係では腫瘤像外に顆粒状の石灰化だけが散在している乳癌は腫瘤像十石灰化の範囲より癌は狭い可能性があった. 一方, 同じく顆粒状の石灰化が散在している場合でも腫瘤像を認めない石灰化だけの乳癌では石灰化の範囲より癌は広い可能性があり, 広がり診断には注意が必要である.

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© 1999 順天堂医学会
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