抄録
近年, 気管支喘息は, 気道の慢性炎症性疾患と認識され, その概念は大きく変化した. 臨床的には発作性の呼吸困難・喘鳴・咳の症状と, 種々に変化する気道閉塞による気流制限を示す. ただし, 長期罹患成人例では気道のリモデリングにより気流制限の可逆性の低下が見られることがある. 気道過敏性も重要な病態生理学的特徴の一つである. 気道が過敏なほど喘息症状がいちじるしい傾向があり, 症状がなくても気道過敏性が存在する. しかし, これらの臨床症状・所見は気管支喘息に特異的なものではない. 典型的な発作を繰り返す場合は診断は容易であるが, 発症初期で症状が軽度な時は, 診断が困難なことが少なくない. また, 高齢者ではCOPD (chronic obstructive pulmonary disease) との鑑別が問題となる. 診断の遅れは治療, 管理の遅れの原因となり, 慢性化・重症化を引き起こす可能性がある.