抄録
パーキンソン病 (PD) は変性疾患としてはアルツハイマー病 (AD) に次いで多く, 近年薬物療法の進歩により予後はかなり改善されている. その病態解明の歴史を振り返ってみると南カルフォルニアで見出されたヘロインの代謝産物MPTPによるパーキンソン症候群の発見が極めて重要な役割をなしている. MPTPの発見によりPDにミトコンドリア電子伝達系複合体Iの酵素活性の低下が明らかにされ, PDにおけるミトコンドリア機能異常が注目されにるに至ったからである. またこの神経毒の発見により選択的黒質神経細胞死のモデルが確立されたことにある. このように現在パーキンソン病の原因としてはミトコンドリア機能異常や加齢現象にも関与していると言われている酸化的ストレス, そしてMPTPのような神経毒の関与が指摘されている. しかしながら, 現在, 酸化的ストレスやミトコンドリア機能異常については, 二次的要因であることが分かっており, 真の要因については依然として不明である. 但し, これら二次的要因を改善させることを目的に抗酸化作用を持つ薬物療法などが開発されており, 一応の成果を納めている. しかしながら, 患者にとって十分に満足する薬物療法とはなっておらず, 真の原因究明が求められている.
近年, 分子生物学の発展の恩恵を受けハンチントン病をはじめとする遺伝性神経変性疾患の原因遺伝子が明らかにされ, 遺伝子治療に向けて第一歩を踏み出した感がある. 遺伝性疾患の重要性は単一遺伝子異常で疾患表現型が再現されることである. 従って, 単一遺伝子異常の病態解明のアプローチを行うことで原因を明らかにすることができる. 多くの遺伝性疾患はまさしくこの単一遺伝子異常から起こっているものである. PDにおいても家族性PDのアプローチが可能になってきており, 特に常染色体劣性遺伝形式をとる家族性PDについてはわれわれの研究室を中心とした研究グループにより明らかにされている.
PDはADに次いで頻度が高く, 今後高齢化社会に向けて益々罹患率が高くなることが予想されている. 事実10万人あたりの罹患率は100人を超えており, 本質的な原因究明が急務となっている.