順天堂医学
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原著
順天堂医院における21年間の慢性血液透析療法の変遷
-透析導入患者の降圧療法とその臨床的効果を中心に-
小泉 美智子福井 光峰彰 一祐濱田 千江子白〓 公富野 康日己
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2001 年 47 巻 3 号 p. 334-341

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抄録
目的: 近年わが国の血液透析患者数は増加の一途をたどっている. 順天堂医院においては透析療法開始後, 本年で30年目となる. 今回われわれは, 当院における血液透析導入患者の変遷を調査・解析するとともに, 血液透析導入時点での降圧療法とその臨床的効果について検討した. 対象・方法: 調査期間は1979年から1999年までの21年間で, 調査項目は血液透析導入患者数の年次推移・導入時の平均年齢・原疾患・合併症・原疾患の診断から血液透析導入までの期間, 導入時点での血圧および降圧薬の使用状況である. これらの調査項目について, 対象患者を糖尿病群 (DM群) と非糖尿病群 (non-DM群) に分類し, 比較した. non-DM群における高血圧合併症例の降圧薬単剤投与群については, 導入時の平均年齢および平均血圧, ならびに血液透析導入までの平均期間について薬剤別に比較検討した. 結果: 血液透析導入患者数は年々漸増しており, 原疾患では, 糖尿病の占める割合が'97年から飛躍的な増加が認められた. 血液透析導入までの期間は, '79年から'83年までと'95年から'99年までの最近5年間の比較で, DM群において有意な延長が認められ (p<0.01), non-DM群では差が認められなかった. non-DM群の降圧薬単剤投与例において, Ca拮抗薬投与群が最も導入時の平均血圧が低く, 中枢神経抑制薬に比べ有意に低値であった (p<0.01). しかし, 透析導入までの期間に差は認められなかった. 結論: 21年間の順天堂医院における透析導入患者の臨床的特徴の検討により, 糖尿病性腎症の急激な増加, および最近5年間における同疾患の透析導入までの期間の延長が明らかとなった. またnon-DM群において, Ca拮抗薬が降圧効果が優れている可能性が示唆された. しかし, 明らかな腎保護作用は認められず, さらに厳重な血圧のコントロールと血圧以外の進展因子の解明が重要と思われた.
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© 2001 順天堂医学会
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