抄録
がんは不治の疾患と考えられがちであるが, 実際は40%が治癒していると予想される. しかし, 初発部位によって予後の差が甚だしく, また治療合併症に苦しむ場合もある. したがって, 癌治療は発展途上であるといえる.
がん治療は, 許容できる範囲での治療合併症で完治させることが理想であるが, 症例によっては, 症状をとる治療を選択する必要もある. がん治療法の3本柱は手術・放射線治療・化学療法である. がんの発生した局所に最も確実な方法は外科手術であり, 次に放射線治療である. 化学療法は単独では局所にたいする効果はあまり高くない. 一方, 遠隔部位には, 手術や放射線治療が行いにくいため, 化学療法が最も有効である. 治療方法にはそれぞれ特徴があり, その特徴を生かして効率的に組み合わせる必要がある.
放射線治療は機能や形態を温存できるので, 口・咽頭・喉頭などのがんに好んで用いられる. 現在の放射線治療は, 画像診断・コンピュータ技術の進歩により, 病変に確実に照射できるようになった. すなわち3次元治療計画に基づく, 強度変調照射法, 頭蓋内および体幹部の定位放射線照射などであり, さらに呼吸などの時間因子もとり込む4次元治療へと進歩しつつある.
今後のがん治療は, 高い治癒率とともに質の良い生活を目的としたがん治療が重要であり, これには『経験によるがん治療』から『根拠に基づいたがん治療』を行う必要がある.