順天堂医学
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原著
マウスの心筋虚血再灌流障害におけるAurintricarboxylic acidの抑制効果
高谷 典秀
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2002 年 47 巻 4 号 p. 493-500

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抄録

血小板活性化の初期段階においては, 血小板膜糖蛋白 (GP) Ibとvon Willebrand Factor (vWF) が結合することで, Sykのリン酸化を引き起こす. そこで今回著者は心筋虚血再灌流障害における血小板の役割を, GPIb-vWFの結合阻害作用を持つAurintricarboxylic Acid (ATA) を用いて検討した. マウスを用いて左冠動脈の30分虚血後, 120分再灌流を行うモデルを作成した. ATA投与群および非投与群における比較では, 心筋障害領域は投与群に比べ非投与群で有意に抑制されていた (P<0.01). また, 再灌流後15分における血小板Syk活性は, コントロールに比べ有意に増加し, ATAの投与で抑制された. 一方, vWFの血中濃度は, 再灌流後に上昇したが, ATA投与では変化が認められなかった. 心筋虚血再灌流障害の初期においては血小板が重要な役割を示し, その際vWFとGPIbの結合が血小板Sykの活性化に関与しているものと思われた. ATAはvWFとGPIbの結合を抑制することで, 虚血再灌流後の心筋障害を軽減すると考えられた.

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© 2002 順天堂医学会
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