順天堂医学
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特集 白井・有山・二川・金井四教授定年退職記念講演
肝胆膵外科の歩み
20020715
二川 俊二
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2002 年 48 巻 2 号 p. 144-152

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抄録
門脈圧亢進症に対する外科治療は614例に実施された. 食道離断術が457例でHassab手術が157例である. 食道離断術は食道胃静脈瘤に対してはもっとも有効であるが, 近年は手術侵襲の少ないHassab手術とEISの組み合わせで良好な成績が得られている. 肝細胞癌症例は617例経験した. うち267例に肝切除が施行された. 肝切除は手技的進歩により出血量の減少, 肝切除の安全性が高まり, 適応が広がった. 切除例の累積生存率は5年62%と全国集計よりも良好であった. 胆道癌切除総症例数は143例である. 胆嚢癌58例・肝門部胆管癌20例・中下部胆管癌41例・十二指腸乳頭部癌24例である. 切除後の5年生存率はそれぞれ44.8%・15.8%・29.3%・53.8%で全国集計より優れていた. 治癒切除例が有意に予後良好で, 根治切除の重要性が確認できた. 浸潤性膵管癌切除例は104例である. ts1症例の3年生存率は45%とts2・ts3に比して良好であった. 予後を左右する因子は, 腫瘍の大きさ・神経叢浸潤・リンパ節転移の有無であった. 治癒切除症例での3年生存率41%と全国集計に比し極めて良好な成績が得られた. 膵癌も早期発見により長期生存が期待できることを強調したい. 以上, 教室の門脈圧亢進症・肝癌・胆道癌・膵癌に対する外科治療の歩みについて述べた.
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© 2002 順天堂医学会
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