順天堂医学
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48 巻, 2 号
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Contents
目次
特集 白井・有山・二川・金井四教授定年退職記念講演
  • -いま何故モデル系でのゲノム解析なのか-
    白井 俊一
    2002 年48 巻2 号 p. 136-143
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    自己免疫疾患は複雑な遺伝様式を示す多遺伝子疾患なので, その発症機構を理解するには感受性遺伝子の解明が必要不可欠である. 近年, ゲノム中にmicrosatelliteやsingle nucleotide polymorphism (SNP) などのDNA多型が発見され, これらを染色体遺伝子座のマーカーとして感受性遺伝子座のゲノム解析が可能となった. しかし, これら感受性遺伝子の数が想像以上に多く, また, 複雑な遺伝子間相互作用が存在するために遺伝解析が難しく, 未だ十分にコンセンサスの得られた感受性遺伝子座の報告は少ないのが現状である. このような状況を克服するために, 現在, 自己免疫疾患自然発症モデル系を用いた解析が進められており, 多数の感受性遺伝子座と位置的候補遺伝子が発見されている. また, これらの解析から, 複雑な遺伝様式をもたらす遺伝子間相互作用の機構も明らかにされてきている. これらの研究によって将来, 自己免疫疾患における自己反応性リンパ球の発生, クローン性増殖. 分化. 成熟などの異常や病態の発生機構が明らかになり, 疾患の予防・治療に新しいアプローチが開発される可能性がある.
  • 20020715
    二川 俊二
    2002 年48 巻2 号 p. 144-152
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    門脈圧亢進症に対する外科治療は614例に実施された. 食道離断術が457例でHassab手術が157例である. 食道離断術は食道胃静脈瘤に対してはもっとも有効であるが, 近年は手術侵襲の少ないHassab手術とEISの組み合わせで良好な成績が得られている. 肝細胞癌症例は617例経験した. うち267例に肝切除が施行された. 肝切除は手技的進歩により出血量の減少, 肝切除の安全性が高まり, 適応が広がった. 切除例の累積生存率は5年62%と全国集計よりも良好であった. 胆道癌切除総症例数は143例である. 胆嚢癌58例・肝門部胆管癌20例・中下部胆管癌41例・十二指腸乳頭部癌24例である. 切除後の5年生存率はそれぞれ44.8%・15.8%・29.3%・53.8%で全国集計より優れていた. 治癒切除例が有意に予後良好で, 根治切除の重要性が確認できた. 浸潤性膵管癌切除例は104例である. ts1症例の3年生存率は45%とts2・ts3に比して良好であった. 予後を左右する因子は, 腫瘍の大きさ・神経叢浸潤・リンパ節転移の有無であった. 治癒切除症例での3年生存率41%と全国集計に比し極めて良好な成績が得られた. 膵癌も早期発見により長期生存が期待できることを強調したい. 以上, 教室の門脈圧亢進症・肝癌・胆道癌・膵癌に対する外科治療の歩みについて述べた.
  • 金井 淳
    2002 年48 巻2 号 p. 153-164
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
診療・研究の最前線(2)
  • -パーキン蛋白のLewy小体形成への関与-
    服部 信孝
    2002 年48 巻2 号 p. 165-172
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    最近, われわれの研究グループによって, 常染色体劣性若年性パーキンソン病 (Autosomal Recessive Juvenile Parkinsonism; AR-Jp) の原因遺伝子産物〈parkin〉がユビキチンリガーゼ (E3) であることが分かった. このユビキチン・プロテアソーム系の直接分子であるparkinの発見はユビキチン陽性の封入体を認める多くの神経変性疾患においてこの蛋白分解系が重要な機能をなしていることを示している. 特に孤発型パーキンソン病 (PD) の病理学的マーカーであるLewy小体をAR-Jpでは認めないことは興味深く, parkin蛋白はLewy小体形成において欠かせない機能をなしている可能性がある. AR-Jp患者では, E3であるparkinの機能不全により基質である蛋白が分解されずに蓄積することで神経細胞死が惹起されることが予想され, その基質に糖化修飾されたα-synucleinが候補として検討されている. α-synucleinはPDのLewy小体の主要構成成分であり, Park1とPark2に共通したカスケードが証明された. 現在遺伝子座のみで原因遺伝子が単離されていないPark3-8についてもα-synuclein-parkinのカスケードに関わっている可能性がある.
  • 木下 勝之
    2002 年48 巻2 号 p. 173-183
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
第9回都民公開講座「関節痛とつきあう」
  • 黒澤 尚
    2002 年48 巻2 号 p. 186-191
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
  • 橋本 博史
    2002 年48 巻2 号 p. 192-196
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    関節リウマチ (RA) は多発性の滑膜関節炎を主病変とする原因不明の全身性炎症性疾患である. 多くは慢性に経過するが, 進行すると関節の破壊・変形を生じ関節の機能障害をもたらす. 経過中, 関節以外の臓器にも病変をみることがあり, 血管炎などによる難治性の臓器病変がみられる場合には, 日本では悪性関節リウマチの概念でとらえられる. RAの患者数は日本では約70万人とされ, 30歳から50歳の女性に好発するが, 小児 (若年性関節リウマチ) や高齢者にも発病する. 原因は不明であるが, 体質・素因に加えウイルスなどの環境因子が重要視されている. 病態発症には自己免疫機序が考えられ, 病態進展には病理学的に5期に分けられる. RAの治療目標は基盤にある免疫異常を是正し, 炎症を抑制することにより疼痛の軽減と関節破壊の抑制, 機能維持・保全, QOLの向上を図ることにある. RAの治療体系は患者の教育, 基礎療法・理学療法を基盤とし, 活動性がある場合には早期に抗リウマチ薬による治療を行い寛解導入を目指す. 抗リウマチ薬には種々薬剤が挙げられるが, 多くは遅効性で効果がみられるまでステロイド薬や非ステロイド抗炎症薬が用いられる. また, 難治性の場合には多剤併用や血漿交換療法が施行される. 最近では, 新しい免疫抑制薬や中心的炎症性サイトカインを標的とした生物学的製剤が開発され臨床応用されている. 治療経過中は, 関節外症状・続発性アミロイドーシス・骨粗鬆症・感染症・薬剤の副作用などの併発に留意する. 日常生活では, 安静と運動のバランスが重要である. 関節の機能障害と変形, 筋力低下を防止するために運動療法の仕方・関節保護の仕方・変形防止のための関節の動かし方・補助具の使い方などを指導する.
  • 星野 雄一
    2002 年48 巻2 号 p. 197-201
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    腰痛は, 成人が感じる痛みのうち頭痛と並んで頻度が高く, 80%以上にのぼる. 腰痛の原因となりうる器官には, 骨・関節・筋・筋膜・腱・神経・椎間板などがあり, またこれらの器官に障害を起こす原因として, 外傷・疲労・変性 (老化) ・炎症・腫瘍などがある. すなわち, 腰痛はこれらの要因が複雑に錯綜して生じる, 非常に複雑な病態である. 腰痛に対する医学の対応は3つに大別され, 第1は癌や椎体炎など, 見逃してはならない重大な疾患を検索することである. 第2は椎間板ヘルニアや腰椎分離症など, 脊椎疾患を見つけ, 適切な処置を行うことである. 第3は上記以外の原因として, 画像診断法では描出できない腰痛に対する地道な研究である. 腰痛の大多数は, この第3の範疇に属する. 《腰痛とつきあう》という概念・対処法は, 多くは上記の第3の場合を想定している. 職業性要因, スポーツ等による使いすぎ, 脊椎の加齢変化などが原因であることが多い. 急性に発症し数日でおさまってしまう腰痛の場合, 再発しなければ特別な注意は要らない. 問題は慢性化した腰痛であり, これには持続性のものと, 再発を繰り返すものとがある. 持続性の慢性腰痛の場合, 原因検索を慎重に行うべきであり, 腰椎不安定性の存在や背筋のいちじるしい筋力低下などの病的状態が考え得る. これらの場合, 脊椎の固定手術や筋力増強などが有効である. 再発を繰り返す慢性腰痛では, 環境因子の解明が重要である. 腰部を暖かく保つこと, 適当な運動により筋力を維持し, また脊柱の可動域を保持することが, 再発予防として重要と考えられている. 腰痛を感じたら, まずは比較的安静を数日とり, これで痛みが寛解しないようなら医療機関を受診し, 重大な疾患や腰椎の治療すべき疾患を検索することが肝要である. これらの疾患の検索無しに, 強い外力を加える民間治療を受けることは危険である.
  • 武藤 芳照
    2002 年48 巻2 号 p. 202-206
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    水中運動は, 浮力により関節への負担を軽くし, 全身の余分な緊張を和らげること, 水の抵抗のもとでからだを動かすことで, 安全にしかも確実に筋力を強化でき, 水圧が胸にかかる状態で努力呼吸を行うために呼吸・循環機能を高められ, 水による温熱効果あるいは寒冷効果が得られ, 骨・関節・筋肉などの血液の流れを改善し, 柔軟性を高めることができる. たとえば肉ばなれ・捻挫・骨折などの運動・スポーツで起きやすい傷害は, 水中運動ではほとんど起きる危険性がなく, 安全である. 温水プールでの水中運動の場合には, スポーツ感覚の明るく軽快な雰囲気の中でからだを動かすことを楽しみ, それが結果的にリハビリテーションの効果につながる. このように水中運動は, 優れた利点をいくつも有するために, 関節痛の運動療法としてきわめて優れている. 水中運動の主要な効果には, 次のようなものがある. (1) 関節の動きを改善する (2) 筋力を高める (3) 痛みを軽減する (4) リラクセーション (5) バランス感覚を磨く さらには, 関節痛のために, 自然に落ち込むことが少なくない中高年にとって, 水中運動は解放感を体験でき, 自身の上達・改善の様子を理解しやすく, 達成感を味わうことができるために, 生きる自身と希望をもたらす効果もある. 運動中や運動後に, 「疲れた!」と感じたり, 関節に痛みを感じたりするようならば, それは「やりすぎ!」とみられる. 普段地上では思うようにからだの動きができない分だけ, 水中で「こんなに動ける!」といううれしさのあまり, つい時間を長くしたり, 回数を多くしたりして家に帰ったらへとへとになってしまう例もある. しかし, こうした運動の仕方ではリハビリテーションの効果も得られないばかりか, かえって関節痛を悪化させたり, 他の病気・障害を招くことさえある. また, 関節痛の水中運動・水泳に適したからだの動きに留意することは, 傷害・事故の予防につながる.
原著
  • --脾内リンパ球サブセットの機能からみた実験的検討--
    日野 眞子
    2002 年48 巻2 号 p. 207-215
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    手術侵襲が担癌生体の免疫能におよぼす影響について脾内リンパ球の機能面から非担癌・担癌中期および末期にわけ実験的に検討した. 実験は1×106コのB16melanoma細胞をC57/BL6マウス背部皮下に移植し, その生存期間により, 担癌中期・末期を設定した. 手術は2時間開腹とし, その24時間後に脾臓を摘出し, 脾細胞のリンパ球サブセットとNK活性を検討した. その結果pan T細胞 (CD3陽性細胞) とその分画であるT-cell receptor (以下TCR) 陽性細胞 (C57αβ陽性細胞) ・CD4陽性細胞・CD8陽性細胞は手術の有無にかかわらず担癌の時期が進行するにつれ減少した. 手術侵襲が加わると, TCR陽性細胞 (C57αβ陽性細胞) は担癌末期で減少した. CD4陽性細胞は担癌中期および末期で手術により有意に減少が認められた. CD8陽性細胞は中期で手術後減少, 末期では変化を認めなかった. CD8陽性CD11b陽性細胞は担癌時期の進行により減少したが, 手術による変化は認められなかった. Natural Killer (以下NK) 細胞は担癌により, 数の減少は認めたものの手術による活性の変化は認められなかった. 以上より, 担癌時期の進行によって脾内リンパ球はいちじるしく減少し, さらにC57αβ陽性細胞・CD4陽性細胞およびCD8陽性細胞は手術侵襲によっていちじるしく減少することがわかった. このことは担癌生体に手術侵襲を加えることにより, 脾内のリンパ球は減少し, 免疫担当臓器としての機能を十分はたせないのではないかという可能性が考えられた.
  • 橘 信彦, 藤巻 拓郎, 中村 眞二, 舟木 俊成, 村上 晶
    2002 年48 巻2 号 p. 216-225
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 家兎角膜内皮の遺伝子発現プロファイルを評価するとともに角膜内皮ジストロフィの候補遺伝子を検索する. 対象と方法: 著者らはこれまで家兎角膜内皮cDNAライブラリーから得られた1000個のクローンの塩基配列決定および相同性検索を行い, 6種の未知遺伝子を含む頻度の高い45種の遺伝子を得た. ヒトゲノム情報をもとにこれらのクローンに対し, 相同性の検索を行い, 新たに見出された相同性のあるcDNAに関して解析を行った. 結果: 2つのcDNA配列 (C82954とC83005) がそれぞれ, 新たに確認されたヒト遺伝子と高い相同性を持つことが明らかになり, 1) C82954はヒト2番染色体にマップされているesophageal cancer related gene 4 protein (ECRG4) に相同性を認めた. 5'RACE法により, 444bpのopen reading frameを含む全長723bpのcDNAクローンが得られ, ウサギECRG4と考えられた. RT-PCRにて, 検討した全ての臓器において発現が確認された. 2) C83005はマウスpolydomain-protein (polydom) と部分的に相同性を認め, ヒトホモログは9番染色体にマップされていた. RT-PCRにおいて, 角膜内皮・結膜・口腔粘膜・腸・肺・脾臓・食道に発現を確認した. C83005のプローブを用いたin situハイブリダイゼーションでは角膜では内皮細胞に脾臓ではリンパ球に染色を認めた. 結論: ECRG4とpolydomが, 角膜内皮で発現量の多い遺伝子群に含まれることが推定された.
  • 早津 宏夫, 飯田 伸子, 古旗 淳, 藤木 慶子, 村上 晶, 中安 清夫
    2002 年48 巻2 号 p. 226-232
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 斑状角膜ジストロフィは常染色体劣性遺伝形式を示す稀な角膜混濁性疾患である. この疾患の患者角膜・血清ではケラタン硫酸の硫酸化の異常が認められることが示され, 患者は抗ケラタン硫酸モノクローナル抗体 (1/20-5D4) への反応性により, 3つのタイプ, すなわちI型・II型・Ia型に分類されている. 最近, carbohydrate sulfotransferase gene 6 (CHST6) の点変異がI型に, また隣接して存在するcarbohydrate sulfotransferase gene 5 (CHST5) との間に存在する非翻訳領域の欠損や組み換えがII型に関連することが報告された. われわれは斑状角膜ジストロフィ (MCD) の1家系のCHST6遺伝子解析を行いその病型との関連について検討した. 対象: 角膜移植を行った斑状角膜ジストロフィ患者1名とその家族を対象とした. 方法: 末梢白血球より得られたDNAを用いてCHST6をPCR法で増幅し直接シークエンス法により解析することで遺伝子変異の有無を検討した. 結果: CHST6のコドン211のアルギニンがトリプトファンに変化するミスセンス変異 (Arg 211Trp) がホモ接合で認められた. Arg211Trpは血清に硫酸化ケラタン硫酸が検出されないMCD (I型) と関連する変異としてすでに報告されている. 考案: 本症例の血清には硫酸化ケラタン硫酸は検出されなかったが, 角膜免疫組織化学は従来の報告のいずれにも該当しない所見を呈していた. Arg211Trp変異はMCDI型の亜型を呈する可能性があると考えられた.
  • 鈴木 貴久, 須郷 広之, 児島 邦明, 深澤 正樹, 別府 倫兄, 二川 俊二
    2002 年48 巻2 号 p. 233-242
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    目的: 肝細胞癌および転移性肝癌症例のdihydropyrimidine dehydrogenase (DPD) mRNA発現について検討した. またDPDmRNA発現量とDPD活性値の相関関係について検討した. 対象: 肝細胞癌16例・転移性肝癌8例 (うち大腸癌7例・乳癌1例) を対象とした. 方法: DPDmRNA発現量をReal Time RT-PCR法にて, DPD活性をRadio enzymatic assayにて測定した. 結果: 肝癌の癌部・非癌部においてDPDmRNA発現量とDPD活性との間に有意な相関関係を認めた (癌部: p<0.0001・非癌部: p<0.01). 癌部と非癌部のDPDmRNA発現量の比較では, 肝細胞癌では有意差を認めなかったが, 転移性肝癌において非癌部で有意に高値を示した (p<0.01). また, 癌部のDPDmRNA発現量は肝細胞癌が転移性肝癌よりも高値であった (p<0.05) のに対し, 非癌部では転移性肝癌が肝細胞癌に比較しDPDmRNA発現量が高値であった (p<0.05). 各臨床病理学的因子との検討では, 非癌部のDPDmRNA発現量とICG-R15値との間に負の相関関係を認め (r=-0.559, p<0.01), 肝機能が低下するとDPDmRNA発現量が低下することが示唆された. 結論: 肝機能障害が高度で, 腫瘍のDPDmRNA発現量が高い症例では, 腫瘍内の5-FUの代謝が進み有効な腫瘍内濃度が維持されないうえ, 有害事象が強く出現する可能性がある. 肝癌組織のDPDmRNA発現量の測定は5-FU投与の適否の判断に有用であると考えられた.
  • 木所 昭夫, 猪狩 淳, 加納 達二, 高森 健二, 丸山 俊秀, 畑下 鎮男
    2002 年48 巻2 号 p. 243-250
    発行日: 2002/09/30
    公開日: 2014/11/12
    ジャーナル フリー
    順天堂大学浦安病院は千葉県東葛南部地域・江戸川区南部地域を医療圏とし, 公式には2次救急施設として, 実際には2.5次救急施設として, 17年間地域に貢献してきた. しかし, さらに救急体制の充実が地域住民・地域公官庁から求められ, 順天堂医院で実施されていた応答医制を平成11年9月から運用開始した. 応答医制導入後の救急室扱い患者数はそれまでの年平均8938名が応答医制導入後1年では15264名, 2年目には15822名と飛躍的に増加した. 同様に, 救急車搬入患者数はそれまでの7年間の平均が1141名であったが, 応答医制導入後の1年では2648名, 2年目には2703名といちじるしい増加をみた. 救急室経由緊急入院患者数の7年間の平均が1225名であったが, 応答医制導入後1年間では1969名, 2年目は1978名と増加した. 千葉県5私大病院の救急車受入数の比較では当順天堂大学浦安病院が最も多く, また応答医制導入後に救急搬送件数が急激に伸びていた. 救急診療・一般診療にかかわらず, 原則的に依頼のあった症例はすべて収容し「断らない」というのが, 私ども順天堂大学浦安病院のpolicyであるが, 相変わらずお断り症例が減少していない. 理由として, 常に満床に近い状態である事があげられる. クリニカルパスの導入などにより在院日数を減少させ, 病床回転率をあげて, 病床をうまく効率的に利用すべきと考える. 今後, 順天堂大学浦安病院の救急体制をどのようにすべきか, 院内の議論を進めてゆく必要があると考えている.
抄録
順天堂医学原著論文投稿ガイドライン
順天堂医学投稿規程
編集後記
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