抄録
関節リウマチ (RA) は多発性の滑膜関節炎を主病変とする原因不明の全身性炎症性疾患である. 多くは慢性に経過するが, 進行すると関節の破壊・変形を生じ関節の機能障害をもたらす. 経過中, 関節以外の臓器にも病変をみることがあり, 血管炎などによる難治性の臓器病変がみられる場合には, 日本では悪性関節リウマチの概念でとらえられる.
RAの患者数は日本では約70万人とされ, 30歳から50歳の女性に好発するが, 小児 (若年性関節リウマチ) や高齢者にも発病する. 原因は不明であるが, 体質・素因に加えウイルスなどの環境因子が重要視されている. 病態発症には自己免疫機序が考えられ, 病態進展には病理学的に5期に分けられる.
RAの治療目標は基盤にある免疫異常を是正し, 炎症を抑制することにより疼痛の軽減と関節破壊の抑制, 機能維持・保全, QOLの向上を図ることにある. RAの治療体系は患者の教育, 基礎療法・理学療法を基盤とし, 活動性がある場合には早期に抗リウマチ薬による治療を行い寛解導入を目指す. 抗リウマチ薬には種々薬剤が挙げられるが, 多くは遅効性で効果がみられるまでステロイド薬や非ステロイド抗炎症薬が用いられる. また, 難治性の場合には多剤併用や血漿交換療法が施行される. 最近では, 新しい免疫抑制薬や中心的炎症性サイトカインを標的とした生物学的製剤が開発され臨床応用されている. 治療経過中は, 関節外症状・続発性アミロイドーシス・骨粗鬆症・感染症・薬剤の副作用などの併発に留意する.
日常生活では, 安静と運動のバランスが重要である. 関節の機能障害と変形, 筋力低下を防止するために運動療法の仕方・関節保護の仕方・変形防止のための関節の動かし方・補助具の使い方などを指導する.