順天堂医学
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原著
Fas遺伝子多型によるFas発現制御と自己免疫疾患
赤倉 玲子文 香淑阿部 雅明姜 奕広瀬 幸子
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2002 年 48 巻 3 号 p. 364-374

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抄録
目的: 細胞のアポトーシスを司るFas分子の欠損は自己抗体産生を伴う全身性エリテマトーデス (SLE) 様の病態を惹起し得ることがMRL/lprマウスの解析で示されている. われわれは以前に, 代表的SLE自然発症モデル系である (NZB×NZW) F1マウスを用いた解析で, 自己抗体産生に関わるB1細胞のFas発現能が低く, Fasを介したアポトーシスに抵抗性であることを見出している. (NZB×NZW) F1には, MRL/lprに見られるようなFas遺伝子異常によるFas分子欠損は認められないが, Fas遺伝子多型によるFas発現レベルの量的変化が関与する可能性を考慮し, この点を解析した. 方法と結果: 1) Fas遺伝子プロモーター領域を含む5'flanking regionをNZBおよびNZWで比較した結果, 9個のsingle nucleotide polymorphism (SNP) が認められた. 2) Fas発現レベルを調べた結果, NZBマウスではT細胞・B細胞いずれにおいてもNZWに比較して低く, これに対応してNZBではNZWに比較してFasを介したアポトーシスに感受性が低いことが判明した. 3) NZB型Fas遺伝子領域をNZWマウスに導入したintervalcongenicマウスによる解析で, Fas遺伝子自身がFas発現レベルを制御していると推定された. 4) (NZB×NZW) F1×NZW退交配マウスを用いた解析で, NZB型Fas遺伝子多型が末梢血B1細胞比率の増加および血中IgG抗DNA抗体価と相関した. 結論: (NZB×NZW) F1マウスにおいては, NZB型の、Fas遺伝子制御領域多型がSLEの一感受性遺伝子として機能している可能性が示された.
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© 2002 順天堂医学会
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