2003 年 49 巻 1 号 p. 77-88
目的: 医療における在宅ホスピスケアシステムを構想する上で, ホスピスや緩和ケア病棟の地域における役割についての示唆を得る. 対象: 全国ホスピス・緩和ケア病棟連絡協議会会員一覧より109施設を対象とし, 統括責任者である医師と看護職者の各1名ずつ218名を対象とした. 方法: 1999年11月-12月, 自作質問紙による郵送自記式無記名調査を実施した. 結果: 対象者218名の内, 104名 (47.7%) から回答があった. 有効回答は77名 (74.0%) で, 緩和ケア病棟が61.0%, 併設型ホスピスが19.5%, 独立型ホスピスが13.0%であった. 在宅ホスピスケアは全体の約半数の施設が実施していたが, 1998年度に在宅で看取った患者数は全体の77.1%が5人以下であった. 在宅ホスピスケアに関わる内容で実施率の高いものは, 在宅がん患者のショートステイの受け入れ, ボランティア育成のための活動であった. 実施率の低いものは, デイケアの実施, 医療福祉物品の貸し出し, 地域住民への健康教育であった. この中で現在は未実施だが実施希望が高いものは, ボランティアの育成活動, 地域の開業医や訪問看護ステーションの看護職者への教育, 地域住民への健康教育であった. 特に医師は訪問看護ステーションの看護職者への教育に強い意欲を持っていた. 結論: 約半数が在宅ホスピスケアを実施しているものの, 在宅で看取った患者はわずかであった. しかしホスピス・緩和ケア病棟の医師や看護職者は, 在宅ホスピスケアにともなう地域への貢献には強い意欲を持っていた.