順天堂医学
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原著
順天堂医院腎・高血圧内科における23年間の腎生検1150例の検討
迫田 智子田代 享一船曳 和彦白土 公堀越 哲富野 康日己
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キーワード: 腎生検, 適応基準, IgA腎症
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2003 年 49 巻 2 号 p. 215-221

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抄録
目的: 当科における糸球体疾患の病型と頻度を腎生検の適応基準別に集計し, 他施設での報告と比較検討した. 対象・方法: 腎生検例1,150例を対象とした. 腎生検の施行基準は時期により相違があり, 顕微鏡的・肉眼的血尿, 蛋白尿, もしくはネフローゼ症候群を呈した症例に腎生検を行った前期 ('78年-'86年) と軽度な顕微鏡的血尿のみの症例および尿蛋白が高選択性で尿沈渣所見の乏しいネフローゼ症候群でステロイド治療を優先した症例には腎生検を行わないと定めた後期 ('87-'00年) の2群に分け検討した. 結果: 腎生検の年間平均症例数は, 前期75.4例, 後期33.6例と後期で減少していた. 最も頻度の高かった組織病型はIgA腎症であり (42%), 次いで非IgA沈着増殖性糸球体腎炎および微小変化群 (MGA) (13%), 膜性腎症 (12%) であった. 前期と後期を比較すると, IgA腎症は38%から47%, 非IgA沈着増殖性糸球体腎炎およびMGAは17%から7%, 膜性腎症は10%から14%へと変化していた. 各発症様式での各疾患の割合は慢性腎炎症候群では, IgA腎症が53%と最も多く, ネフローゼ症候群では膜性腎症が33%で最も多かった. 結論: 腎生検の適応基準が変化してもIgA腎症は高率に認められた. 腎生検数が後期では前期に比べ減少していたことや組織病型の頻度に相違があったことは, 腎生検の適応基準の相違によるものと考えられた. しかし, 腎生検の適応基準に変化があっても, 確定診断と適切な治療法の選択や予後判定のために, 腎生検の施行は必要と思われる.
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© 2003 順天堂医学会
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