順天堂医学
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特集 生活習慣病と消化器疾患
生活習慣病としての大腸癌
冨木 裕一坂本 一博鎌野 俊紀
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2004 年 50 巻 4 号 p. 338-346

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抄録
近年わが国では大腸癌が増加しているが, その原因として食生活の欧米化により, 脂肪の摂取量が増加したことが要因のひとつと考えられている. 高脂肪食は肝の胆汁酸産生と分泌を亢進させ, 便中胆汁酸の増加をきたす. 実際に大腸癌患者の便中胆汁酸は健常者より高濃度であり, その組成も二次胆汁酸のデオキシコール酸 (DCA) とリトコール酸 (LCA) が多い. また, 食生活の欧米化に伴い, 血清コレステロールレベルの上昇も認められるようになっているが, コレステロール低値群に悪性疾患が多いことは以前より注目されている. 消化管癌患者のコレステロールレベルをコントロールと比較すると, 早期癌でも有意に低値を示したことから, 担癌者の低コレステロール血症は経口摂取の低下や栄養状態に起因するものではなく, 癌の早期から脂質代謝系に何らかの異常が生じている可能性があることが示唆された. 大腸癌に関しては環境的要因が大きく作用するため, 大腸癌の予防には食物や身体活動などの生活習慣の改善が重要と考えられている. しかし, それだけで予防できるとは言えないため, 早い時期から定期的に検査を受けることも大切である.
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© 2004 順天堂医学会
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