抄録
目的: 視機能について, 年齢と運動習慣の違いを基準とした対象群を設け, 8項目に関する機能測定を実施し, その比較検討を行った.
対象・方法: 運動習慣を持つ男性30名と運動習慣を持たない男性30名を対象として行った. 運動習慣群とは剣道を週3回以上行っている若年群 (年齢21.0±0.6歳, 剣道歴13.5±1.7年) 10名, 中年群 (年齢41.1±1.7歳, 剣道歴32.0±2.4年) 10名, 高年群 (年齢63.3±2.1歳, 剣道歴49.2±1.1年) 10名とし, 非運動習慣群は, 若年群 (年齢20.9±1.1歳) 10名, 中年群 (年齢41.1±4.2歳) 10名, 高年群 (年齢64.2±2.5歳) 10名である.
結果: コントラスト感度・眼球運動・瞬間視力の各能力については, 加齢および運動習慣の違いで差はみられなかった. また, コントラスト感度は静止視力との相関が強くみられた. それに対し前後方向動体視力 (KVA), 深視力の各能力は, 加齢による有意な低下がみられた. また, 横方向動体視力 (DVA), 眼と手の協応運動の各能力は, 加齢に伴う低下がみられたが, 運動習慣を持つ者が持たない者より有意に優れている結果がみられた.
結論: コントラスト感度は適正な視力矯正がその能力を向上させる要因であると思われる. それに対し前後方向動体視力 (KVA), 深視力は加齢が能力低下に影響を及ぼす一要因であることが示唆された. また, 横方向動体視力 (DVA), 眼と手の協応運動の各能力は, 加齢に伴い低下するが, 運動習慣によってその低下スピードを鈍化させる効果があることが判明した.