順天堂医学
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第17回都民公開講座《高血圧と合併症――その予防と対策――》
心臓病から身を守る
-高血圧管理の重要性-
代田 浩之
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2006 年 52 巻 2 号 p. 263-268

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抄録
心臓病において高血圧はその原因であると共に増悪因子でもあり, その管理は大変重要である. 高血圧の心臓病への関与には, 圧負荷から左室肥大を起こし拡張障害から心不全に至る経路と, 動脈硬化が進行し心筋梗塞を起こして収縮障害から心不全に至る経路がある. 従って心臓病における高血圧の管理として両方の経路を考えた治療を行う事が必要である. 高血圧は, 心拍出量が増加 (体液量の増加や心収縮力の増強) するかまたは末梢血管抵抗が増加 (血管の収縮や血管壁肥厚) する事により発症する. 体液量・心収縮力・血管収縮・血管壁肥厚を起こす要因として塩分過剰摂取・腎臓機能障害・ストレス・交感神経過剰緊張・肥満・高インスリン血症・遺伝子異常・レニンアンギオテンシン系活性化などが関与している. 従って圧負荷の管理として, 減塩・ストレス解消・肥満の予防・適度な運動・適切な降圧薬による十分な血圧のコントロールが重要である. 動脈硬化は, 多くの疫学調査の結果から幾つかの発症要因 (危険因子) が解る. 遺伝的素因・過食・運動不足・肥満・加齢・喫煙・糖尿病・高血圧・ストレス・不眠・コレステロールなどが危険因子であり, これらの因子を多く持てば持つほど動脈硬化が起こる. 従って動脈硬化の予防はこれらの要因をできる限り減らす事である. 高血圧, 高コレステロール, 糖尿病に対して有効な薬剤が使えるようになったが薬剤のみでは解決されず, 喫煙・肥満・ストレス・運動不足などと共に生活習慣の改善が必要である. 動脈硬化の新しい危険因子としてメタボリックシンドロームという新しい概念が提唱されている. メタボリックシンドロームとは, 過食・運動不足によって内臓に脂肪が蓄積した状態で, 高血圧・糖尿病・高脂血症を高率に合併し動脈硬化を起こす. メタボリックシンドロームは, 過食・運動不足が原因でありその管理には食事管理と適度な運動が必要である. 薬学と医学の進歩により安全で効果的な幾つかの薬剤が使用可能になり心臓病の予防に役立つが, 心臓病予防の多くの要因の管理には不十分である. 心臓病から身を守る高血圧管理として生活習慣の改善が必要である.
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© 2006 順天堂医学会
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