抄録
【目的】近年、筋肉内脂肪含量を高めた豚肉が市場に多く流通している。給与飼料は筋肉部分の食味だけでなく、脂肪交雑やオレイン酸含量など脂肪の質に影響を与える。そこで本研究は、給与飼料の異なる4種の豚肉について、筋肉部分および脂肪部分の食味特性の違いを検討することを目的とした。
【方法】試料に用いた豚肉は脂肪酸組成が既知な同一種の豚に大豆油、玄米、カポック油およびリジン制限(サシ区)の飼料をそれぞれ給与した去勢および雌、各2頭ずつ、対照を合わせて計10頭とした。部位は胸最長筋部(ロース)を用いた。調製は170 ℃に予熱したオーブンで内部温度70 ±1 ℃まで加熱し、その後0.8 cm厚にスライスし、1 枚を筋肉部分と脂肪部分のどちらも付いた状態に切り分け、官能評価用試料とした。筋肉評価項目はやわらかさ・線維感・多汁性・風味の強さ・うま味の強さ、脂肪評価項目は脂肪のやわらかさ・くささ・うま味の強さ、それらをふまえた総合評価とした。さらにレオナーRE2-33005Bを用い破断測定も行い、比較検討した。
【結果】官能評価の結果、給与飼料による違いはテクスチャー項目のやわらかさ、線維感、多汁性、脂肪のやわらかさで有意な差がみられた。サシ区は粗脂肪含量が多く筋肉部分の評価が高く、破断測定の結果においても低い値となった。玄米給与区は脂肪部分の評価が高く、給与する飼料によって特徴に差がみられた。以上より、筋肉部分ではサシ区、脂肪部分では玄米区およびサシ区の評価が高かったが、テクスチャーは加熱温度による影響も大きいため、肉質とともに加熱温度も含めて検討することが必要と考えられる。