順天堂医学
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原著
IgA腎症患者におけるMass Spectrometry (MS) を用いたIgA結合蛋白の解析
坂本 慶子鈴木 祐介田中 裕一峯木 礼子藤村 務高 ひかり堀越 哲村山 季美枝上野 隆富野 康日己
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2007 年 53 巻 1 号 p. 121-130

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抄録
目的: IgA腎症の病因にIgA免疫複合体 (IgA-IC) の関与が議論されているが, いまだその抗原は同定されていない. 今回われわれはMSを用いて, 血清中のIgA結合蛋白を解析することで, 抗原の有無を検討した. 対象: IgA腎症患者6名, 扁桃摘出術とステロイドパルスの併用療法3クールを完了したIgA腎症患者5名と健常人8名を解析した. 方法: 血清400μlとジャカリンを混合結合させた後, 0.8Mガラクトースで溶出した. 溶出した蛋白はSuperdex 200 10/300GLカラムで分画し, 各分画より蛋白を抽出し, 電気泳動後, liquid chromatography-electron spray ionization mass spectrometry (LC-ESI MS) で解析した. さらに, 治療前後の血清から得たジャカリン結合蛋白をWestern blottingにて定量的に比較した. 結果: IgA1/IgA1結合蛋白は, 170kDa, 340kDa, 680kDa, 680kDa以上の4つのピークに分画化された. それぞれの分画において, MSの解析ではapolipoprotein, immunoglobulin (Ig) heavy chain (α, μ, γ), light chain, Ig J chain, fibronectin, C1INH, C4bp, α1MGなどの内因性物質が認められた. 特に, C4bpは患者群で高頻度に認められた. 治療後では, 170kDaと680kDa以上の蛋白濃度が上昇し, 340kDaの蛋白濃度が低下する傾向にあった. また, IgA1結合IgG, C4bp, C3の発現量は, 治療後に減少していた. 結論: 今回の検討では, IgA1結合蛋白中に明らかな外来性抗原を確認することはできなかったが, IgGやC4bpはIgA腎症の病因に重要な役割を果たしている可能性が考えられた.
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© 2007 順天堂医学会
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