抄録
目的: IgA腎症の発症・進展の一因として, ヒンジ部の糖鎖に異常をもつIgA1の関与が示唆されている. また, このIgA1ヒンジ部糖鎖異常の誘導に, Th2サイトカインが影響していると考えられているが, 十分に解明されていない. 本研究では不死化したヒトIgA1産生B細胞を用いて, T細胞 (Th1, Th2) サイトカインとIgA1ヒンジ部糖鎖異常誘導との関連性を検討した. さらに, 近年クローニングされ, ヒンジ部糖鎖修飾に直接関わるとされるcore1β1, 3-galactosyltransferase (C1β3Gal-T) とその分子シャペロンであるCosmcのサイトカイン存在下での発現動態を解析し, これらの分子のIgA1糖鎖異常誘導への関与を検討した.
対象・方法: ヒトIgA1産生B細胞を, T細胞サイトカイン (Th1: IFN-γ, Th2: IL-4, IL-5) 存在下で培養し, 培養上清中のIgA1の糖鎖修飾の相違を, N-アセチルガラクトサミン (GalNAc) を認識する特異的レクチン (V\icia Villosa) を用いたELISAにより解析した. また, T細胞サイトカイン (IFN-γ, IL-4) 刺激下での経時的なC1β3Gal-TとCosmcのmRNA発現動態をrea1-time PCRを用いて解析した.
結果: IL-4・IL-5刺激は, IFN-γ刺激と対照群と比較して有意に細胞増殖を誘導した. また, IL-4存在下では, 培養上清中のIgA1量とGalNAcを表出したIgA1の有意な増加を認めた. さらに, IL-4刺激では, C1β3Gal-TとCosmc mRNAの経時的な発現低下が確認された.
結語: Th2サイトカインの一つであるIL-4は, B細胞におけるC1β3Gal-TとCosmc mRNAの発現低下を誘導し, その結果IgA1ヒンジ部の糖鎖異常誘導に関与している可能性が示唆された.