抄録
目的: 多くの腎性貧血を有する腹膜透析患者に投与されているエリスロポエチン (Epo) は, 尿細管結紮再灌流腎症により誘導されたtransforming growth factor-β1 (TGF-β1) の発現を抑制することが報告されている. また, 低酸素状態の腎尿細管上皮細胞よりhypoxia-inducible factor-1α (HIF-1α) が発現することが確認され, TGF-β1の下流因子であるconnective tissue growth factor (CTGF) の発現を誘導することが報告されている. 今回, 我々はクロールヘキシジングルコネート (CG) 刺激による腹膜硬化モデルラットを用い, Epoの腹膜への影響について検討した.
対象・方法: 8週齢の雄Sprague-Dawleyラットを用いた. CGのみ腹腔内投与を行ったCG群, CGとEpoの腹腔内投与を行ったCG+Epo群, Epoのみ腹腔内投与を行ったEpo群および対照群の4群を作成し, 投与開始28日後に壁側腹膜を採取し, 免疫組織学的検索 (エリスロポエチン受容体 (EpoR), HIF-1α, pimonidazole) を行った. また, real-time PCRによるHIF-1α, TGF-β1, CTGFの遺伝子発現を検索した.
結果: CG群の腹膜は著明な肥厚を認めたが, Epoの併用 (CG+Epo群) により肥厚は抑制された. CG群の肥厚した腹膜内にEpo R, HIF-1α, pimonidazole陽性細胞を多数認められたが, これらはEpoの併用 (CG+Epo群) により減少した. Epo投与群 (CG+Epo群, Epo群) でのヘマトクリットは, 著明に上昇した. real-timePCRにより, CG群でHIF-1α・TGF-β1・CTGF遺伝子の強い発現が認められ, Epoの併用 (CG+Epo群) によりこれらの遺伝子発現は抑制された.
結論: 腹膜硬化モデルラットの腹膜にEpo R, HIF-1α, pimonidazole陽性細胞が多数認められ, 低酸素状態であることが示された. Epoの投与により腹膜組織の虚血およびTGF-β1を介したCTGFの発現を抑制することで, 腹膜の肥厚を抑制することが示された.