順天堂医学
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話題 インフルエンザ
季節性インフルエンザワクチンの効果と限界
関谷 充晃
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2009 年 55 巻 3 号 p. 240-244

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抄録

1972年以降, わが国では不活化インフルエンザワクチンであるHAワクチンが汎用されています. 通常, A型のウイルス株2種類 (H1N1, H3N2) とB型1種類のいずれの型にも効果があるとされています. ワクチン接種により, インフルエンザによる重篤な合併症や死亡のリスクが軽減することが期待されますが, 現在までその有効性に一定の見解がなく, 予防接種法などの法制度上のワクチンの位置づけも変遷してきました. その有効率は, 被接種者の背景によって異なります. 65歳以上の健常高齢者については約45%の発症を予防, 約80%の死亡を回避し, 60歳以下の健常成人では70-90%の罹患を予防したと報告されています. 一方, 1歳以上6歳未満児については, 発熱を指標とした有効率は20-30%で有効と結論しています. ワクチンの有効率は, 本邦と米国での報告はおおむね合致しており, インフルエンザの発症予防の上で, ワクチンが有効と結論づけうる結果といえます. 現行のワクチンの問題点としては, 年齢によっては安定して抗体を誘導できないこと, 現在の皮下注射型ワクチンでは気道粘膜に初期の感染成立を抑えるIgA抗体を誘導できないこと, 接種による副反応が実際には高頻度にみられること, などが挙げられます. ワクチンは今後もインフルエンザの発症予防の大きな柱であり, これらの問題点が解決された有効かつ安全なワクチンの開発が望まれます.

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© 2009 順天堂医学会
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