順天堂医学
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原著
順天堂医院における高齢者の脳梗塞入院患者の病型別解析
動脈硬化リスク因子および発症から入院までの日数との関連
馬島 英輔卜部 貴夫服部 信孝稲葉 裕
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2010 年 56 巻 2 号 p. 116-122

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抄録
目的: 順天堂医院に入院した脳梗塞患者の病型別の頻度およびリスク因子を明らかにし, 入院までの期間との関連性の検討を目的とした. 対象と方法: 2003年1月1日から2005年12月31日の期間に, 脳梗塞で当院脳神経内科に入院した65歳以上の362例を対象とした. その中で血栓性脳梗塞 (ラクナ脳梗塞・アテローム血栓性脳梗塞) と塞栓性脳梗塞 (心原性脳塞栓症) とで, メタボリックシンドローム (以下MetS) を構成する動脈硬化のリスク因子との関連性を検討した. 次に血栓性脳梗塞と塞栓性脳梗塞とで, 発症-来院までの日数を, 発症から2日以内 (以下48時間未満) と2日-7日とで関連性を検討した. さらに年齢・性別との関連性を検討した. 結果: 脳梗塞の病型と動脈硬化のリスク因子との関連性は, 高血圧の既往歴が血栓性脳梗塞で多く, 有意差がみられたが, 他のリスク因子・およびその組み合わせとでは有意差がみられなかった. また動脈硬化のリスク因子別の発症-来院までの日数と脳梗塞の病型とでは, 関連性を認めなかった. 脳梗塞の病型と発症-来院までの日数との関連性では, 48時間未満の来院が血栓性脳梗塞で177人/238人 (74.4%) に対し, 塞栓性脳梗塞で52人/55人 (94.5%) と早期に来院する傾向があり, 有意差を認めた. さらに性別・年齢別に関連性を検討すると, 全年齢・男女の合計で有意差を認めた. 考察: 対象となった脳梗塞がMetSを構成するリスク因子との関連性が低いこと・高血圧との関連性が示された理由は, 穿通枝系の脳梗塞症例の多さ, 大規模な疫学研究とのデザインの違い (横断研究である), 大学病院の症例である (重症例が多い) 等が考えられた. 脳梗塞の病型と発症-来院までの日数とに関連性があり, 塞栓性脳梗塞での早期の来院が明らかな理由は, 塞栓性脳梗塞の症状が突発的に完成し, 早期より明確に診断しやすいことによると考えられた.
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© 2010 順天堂医学会
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