目的: ヒト糖尿病腎症の発症・進展には遺伝因子の関与が考えられているが, 疾患として不均一であるため, 責任遺伝子座の同定は困難である. 今回, 遺伝的に均一な2型糖尿病腎症モデルマウスであるKK-A
y/Taマウスを用いて量的形質座位 (QTL) 解析を行うことで, 腎症の候補遺伝子座について検討を行った.
対象: KK-A
y/TaマウスとBALB/cAマウス
方法: (KK-A
y/Ta×BALB/cA) F2 intercrossマウスを270匹作製し, 8, 12, 16, 20週齢におけるHbA1c, 尿中アルブミン/クレアチニン比 (ACR), 空腹時体重を測定した. 85個のマイクロサテライトマーカーを用いて遺伝子型を決定し, QTL解析を行った.
結果: 20週齢のACRに関連した遺伝子座は染色体9番にみられ, suggestiveな連鎖が認められた. 8, 20週齢のHbA1cに関連した遺伝子座は染色体7番, 8, 12週齢の空腹時体重に関連した遺伝子座は染色体1番にみられ, ともにsignificantな連鎖を認めた. これらの遺伝子座は, これまでに報告されている責任遺伝子座とは異なっていた.
結論: KK-A
y/TaマウスのQTL解析により, 新たな糖尿病腎症疾患感受性遺伝子座が同定された. ACRに関与する遺伝子座とHbA1cを規定する遺伝子座とは異なった位置にあるが, 両者は相補的に関与している可能性が示唆された.
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