抄録
近年, 健康を損ねる因子を防ぎ取り除くことを目的とする予防医学や, セルフメディケーションによる健康維持, 生活習慣病の増加に伴う健康志向の高まりから, 「健康食品」の需要が拡大しています. しかしその一方で, このようなニーズの高まりに対し, 誇大広告を含め効果について必ずしも科学的根拠が十分でない情報が流通するなど, 医薬品と似た形状でも厳格な臨床試験や承認の必要がない「健康食品」を適切に利用することが困難な状況も生じています. 製品側の問題だけではなく, 「天然物は安全である」「多く摂るほど健康になる」など, 消費者側の誤認によっても健康被害が起こる可能性があります.
また, 「健康食品」の中には医薬品と併用することで医薬品の吸収や代謝を促進したり阻害するなどして, 医薬品の効果に影響を及ぼすものもあります. そのため, 医薬品の治療効果が得られず症状を悪化させるなどの問題が起こる可能性があります.
そこで本稿は一般の消費者の方に向けて, 1. 「健康食品」とは何か, 2. 医薬品との相互作用, 3. 情報収集の重要性, 4. 適切な利用法について解説いたします. まず, 「健康食品」の定義や区分について説明します. 次に, 食品と医薬品との注意すべき相互作用について代表的な例を示し, 続いて, 宣伝されている「健康食品」の情報を読み解く際の注意点と科学的根拠のある情報源について解説します. 最後に「健康食品」の適切な利用について気をつけていただきたい点を解説し, まとめとしたいと思います. うまく「健康食品」を活用するには, 私たち消費者の一人ひとりが正確な情報・知識をもつようにすることがなにより大切となります. 「健康食品」を購入・利用するにあたり, 記憶の片隅に留め置いていただければ幸いです.