順天堂医学
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第28回都民公開講座《スポーツと健康》
ロコモティブ症候群って何?
金子 和夫
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2011 年 57 巻 5 号 p. 449-455

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抄録
日本は世界に誇る長寿国ですが, その平均寿命に, からだ (運動器) の寿命が追いついていません. つまり要介護になってからの期間が長く, いわゆる健康寿命とのギャップが生じています. 日本整形外科学会ではロコモティブ症候群を提唱し, 加齢とともにリスクが高まる病気に対して対策をとるように呼びかけています. 「ロコモティブシンドローム」 (運動器症候群) とは, 骨・関節・筋肉・腱・靱帯・神経・脊髄, 筋肉など運動器と呼ばれる器官の働きが衰えて「歩いたり」「立ったり」といった動作が困難になり, 要介護や寝たきりになってしまうこと, または, そのリスクが高い状態のことです. 略して“ロコモ”といいます. 個別の病気だけでなく, 全身の状態から要介護の可能性をチェックしなければ, 歳を重ねるごとにロコモティブ症候群になり, 寝たきりになってしまう可能性があるものなので, 早めに対策を始めることが大切です. ロコモの原因は, 主に3つあります. 「バランス能力の低下」「筋力の低下」, これらは転倒のリスクを高めます. さらに「骨や関節の病気」. なかでも骨がスカスカになる「骨粗鬆症」, 膝の関節軟骨がすり減る「変形性膝関節症」, 腰の神経が圧迫される「脊柱管狭窄症」が代表的な疾患です. 50歳を過ぎるとこれら疾患は急増します. 入院治療が必要なケースも多く, そのピークは70歳代です. 近年の研究で, こうした運動器の障害が, 要介護や寝たきりと深く関係していることがわかってきました. 要介護・要支援認定の30%以上は, 「関節の病気」や「転倒による骨折」が原因なのです. 現在, ロコモな方とその予備軍は, 全国に4,700万人いると推測されています. ロコモティブ症候群を早期にチェックする方法があります. 7つの項目からなるロコチェックであります. これらにあてはまる方は早期にロコモ体操を取り入れることによってロコモティブ症候群を軽減することが可能です.
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