バンコマイシン感受性が最小発育阻止濃度4-8mg/lと低下し, バンコマイシン治療に抵抗を示す菌Vancomycin-intermediate
S. aureus (VISA) が世界各地で出現している. われわれは世界11ヵ国よりこれまでに分離されたVISA 46株の分子遺伝学的解析を行った. 検討したVISA株中, MRSAは43株, Methicillin-susceptible
Staphylococcus aureus (MSSA) は3株であった. VISAクローンとしては, 以下の9クローンが見出された: CC (clonal complex) 5-typeII SCC
mec (19株), CC8-typeIII SCC
mec (10株), CC8-typeI SCC
mec (6株), CC8-typeIVd SCC
mec (3株), CC30-typeII SCC
mec (2株), CC45-typeII SCC
mec (2株), CC8-typeII SCC
mec (1株), CC5 (2株), CC8 (1株). 供試菌株のコアグラーゼ型,
agr型はMLSTとよく相関した.
本研究では, protein A分子内の
spa typeとIgG結合領域の相関を検討し, IgG結合領域の構造はMLSTとよく一致することを確認した. またその過程で同一のCCに属する場合でもIgG結合領域のユニット数に違いがあるのを見出した. これを適用する形で, 本研究では, さらに4ヵ国から分離されたCC5-typeII SCC
mec株 (19株) を検討して, Pulsed Field Gel electrophoresis (PFGE), Protein A, 毒素性ショック症候群毒素遺伝子 (
tst) の保有を合わせて検討を比較した. その結果, PFGE のbanding pattern,
spaタイプがまったく同じで
tst遺伝子を保持しないST5クローン5株, ST105クローン2株が見出され, 米国内での同一クローンの伝播が示唆された. 一方, 米国分離株とほかのアジア諸国の分離株を比較した場合, protein AのIgG結合領域の長さ, および
tst遺伝子の保有の有無に大きな違いがあり, アジアで分離された3株でも,
spaタイプが違っていた. これらの結果から, ある特定のVISA株が4ヵ国に蔓延したのではなく, それぞれの国で病院に蔓延していたMRSAが別個にVISAに変化したことが推察された.
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