抄録
少子高齢化が進み, わが国の高齢化率は22.7%, 総人口に占める後期高齢者の割合は10.8%である. 今後の人口構成をみると, 人口減に加えて, 高齢化のさらなる進行が予測されており, 社会的・経済的な課題, 特に医療費や介護費の増大が危惧されている.
筆者は, 1989年 (平成元年) から全国老人クラブ連合会にかかわり, 老人クラブという組織を通して, 「高齢期の運動による健康づくり」を推進し, 高齢期にある人々が地域でともに支えあって, 元気で生きがいのある生活が送れることをめざしてきた. 全国各地の高齢者と語り合っていくなかで, 運動に無関心, あるいは, 関心があっても運動に参加する機会が作れない多くの高齢者に対して, どのような働きかけが有効であるかを模索してきた. 今回の都民公開講座では, 国の健康日本21やWHOの運動器の10年に触れながら, 老人クラブの「運動による健康づくり」の自主的な取り組みを紹介し, 高齢者が気軽に実践できる動きのレッスンを体験していただいた. 本稿では, 20年にわたる高齢者とのかかわりで得られた資料 (指導記録・意識調査・体力測定の分析, 転倒, 80歳以上の外出についてのモニター調査) をもとに高齢期の運動指導のポイントと留意事項についてまとめ, 最後に初心者向けのフェルデンクライスメソッドのレッスンを紹介した.