順天堂医学
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原著
2型糖尿病腎症における血清蛋白の早期糸球体障害マーカーとしての有用性
齋藤 憲祐富野 康日己
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2012 年 58 巻 2 号 p. 168-172

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抄録

目的: 2型糖尿病腎症患者血清において, 中分子蛋白であるアルブミン (ALB) ・トランスサイレチン (TTR), 低分子蛋白であるレチノール結合蛋白 (retinol binding protein;RBP) ・シスタチンC・β-トレースプロテイン (BTP) およびUN・UAを測定し, いずれの血清蛋白が, 早期糸球体障害マーカーになりうるのか, また病期分類に使用可能なのかについて検討した. 対象と方法: 2型糖尿病腎症患者82検体 (男性49例, 女性33例, 平均年齢60歳, 病期1 22検体, 病期2 7検体, 病期3a 19検体, 病期3b 14検体, 病期4 20検体) を用いた. 血清ALB・TTR・RBP・BTP・シスタチンCの測定には, 全自動免疫化学分析装置ベーリングネフェロメーターIIを用いた. 厚生労働省作成の糖尿病腎症の病期分類別に比較検討した. 結果: 病期1と病期2で有意な差を認める項目はなかった. 病期2と病期3aで有意差を認めた項目は, RBP, シスタチンCの2項目であった. 糖尿病腎症の各病期を識別する各種血清蛋白の能力を, ROC分析のAUC (曲線下面積) により比較し評価したところ, 糖尿病腎症病期2と3aを識別する能力は, シスタチンCとRBPが高いことが示された. また, 糖尿病腎症病期3bと4を識別する能力は, クレアチニンとシスタチンCが高いことが示された. 結論: 血清シスタチンCは, 糖尿病腎症病期2と病期3aにおいて識別能力が高いことから, 早期腎糸球体障害マーカーとして使用可能であることが示唆された. 血清クレアチニンは, 糖尿病腎症病期3aと病期3bおよび病期3bと病期4において識別能力が高いことから, 末期腎症および透析導入を判断するためのマーカーとして使用可能であることが確認された.

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