順天堂医学
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特集 第327回順天堂医学会学術集会
新規血管炎症反応性蛋白Pentraxin 3の測定系開発から臨床展開へ
井上 健司
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2012 年 58 巻 4 号 p. 293-302

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抄録

Pentraxin 3 (PTX3) はCRPと同じPentraxin familyに属す急性炎症反応性蛋白である. しかしその発現分布はCRPと異なり, 主に動脈硬化巣に存在する細胞 (内皮, 平滑筋, 好中球, マクロファージなど) に限局している. さらにin vitroデータではあるが, ヒト内皮細胞においてスタチンで最も抑制される遺伝子でもある. CRPの仲間で, 動脈硬化巣に優先的に発現し, スタチンの標的遺伝子の可能性というストーリーは, PTX3は大変魅力的なバイオマーカーになるのではないかと期待をもたせる. そこで筆者らは, 基盤となる高感度測定系の開発と大規模健診者データからの解析に基づき, 正常値を規定した. 同時にPTX3は古典的冠血管危険因子と独立性の高い因子であり, 不安定狭心症患者で有意に上昇することを報告した. そしてその後の急性冠症候群症例の詳細な検討結果からPTX3は主に血栓内に浸潤した好中球によって増加することから今後様々な臨床研究結果の報告が期待される.

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© 2012 順天堂医学会
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