大地震発生直後,人々の滞留状況や避難状況をリアルタイムに把握することは,二次被害を軽減する上で重要である.しかし,従来のシミュレーション技術を災害時の初動対応等へリアルタイムに活用するためには,計算時間や推定精度の課題を克服する必要がある. そこで本稿では,大地震時の物的被害(建物倒壊,道路閉塞,市街地火災延焼)および避難者一人ひとりの行動を記述する精緻な都市内広域避難シミュレーションの結果を集約し,大地震発生時の避難行動を,機械学習で得た計算量の少ない行動モデルで推定するための手法を検討することを目的とする. 具体的には,エージェントベース型の広域避難シミュレーションモデルから得られる,物的被害も考慮した精緻な都市内広域避難シミュレーション結果を観測軌跡と想定する.まず,これらの軌跡群を,クラスタリングにより比較的少数のパターンに分類し,得られたクラスタの特徴を分析する.次に,軌跡クラスタリング結果をもとに,避難者の状態を推定する方法について検討する.さらに,パターンごとの避難行動特性を時系列データとして学習した避難行動軌跡予測モデルを構築し,本手法の有用性を評価する.