クリックや閲覧などの行動履歴,すなわち暗黙的評価のデータを対象とした推薦モデルとしてCollaborative Metric Learning(以下,CML)が知られている.CMLでは,ユーザとアイテムの関係性に加えて,ユーザ同士,アイテム同士の類似性などを埋め込み空間で表現し,この空間上でユーザとの距離が近いアイテムを嗜好に合致しているものとして推薦する.しかし,CMLは多くのユーザに人気のあるアイテム(メジャーアイテム)に偏重した学習が行われてしまい,その他のマイナーアイテムの埋め込み表現の精度が軽視される傾向がある.一方,ユーザが認知していなかったような意外性のある推薦を行うためには,ユーザの嗜好に合致したマイナーアイテムの埋め込み表現を精度良く学習することが必要となる.そこで本研究では,暗黙的評価の観測数に応じた重み付けをすることで,ユーザの嗜好を捉えた埋め込み表現を学習し,マイナーアイテムも含むような意外性のある推薦を可能とする手法を提案する.最後に,実際の映画評価データに提案手法を適用し,ユーザの嗜好を考慮した意外性のある推薦における提案手法の有用性を示す.