情動反応の解析において,対象の人がどのような特性や状態であるのかを考慮することは重要である。情動反応単体では無く,個人の状態や特性も加味して解析を行うことで,全体での解析では平滑化されてしまう特徴が見いだせる可能性がある.そこで本研究では,個人の状態を加味した情動反応解析のために,情動と個人の状態の対応関係を調査した.調査方法として,視覚刺激に対する情動反応と個人の状態を示す自己評価尺度の対応について解析を行った.具体的には,情動を喚起する画像データセットであるIAPS(International Affective Picture System)の画像を人に提示し,ウェアラブルデバイスを用いて情動反応として生体信号(心拍・皮膚電気抵抗・体温)を取得した.さらに,実験後に自己評価尺度としてベック絶望感尺度(BHS),内受容感覚への気づきの多次元的アセスメント (MAIA),対人反応性指標(IRI)についてのアンケートに回答させた.結果として,皮膚電気抵抗と自己評価尺度に相関がみられ,身体反応の刺激に対する鋭敏さが,内受容感覚の気づきや感情の指向性に影響を与える可能性が示唆された.