本研究では、東京証券取引所に上場している企業が提出した「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」に記載されている人的資本の定性的情報をテキストマイニングにより視覚的に分析することを目的とした。2023年3月期の決算から、大手企業約4000社に人的資本情報の開示が義務化されたことは、ステークホルダーからの企業の人的資本情報への関心の高まりを示していると言える。義務化が開始して間もないため、本研究の新規性は高いと考えられる。 この報告書に対して形態素解析を実施し、その後、人的資本と関連性が高い単語と連なる単語を抽出し、階層的クラスター分析及び共起ネットワークグラフを用いて分析を行った。その結果、階層的クラスター分析では「女性」、「管理」、「採用」といった単語に強い関連度が示され、共起ネットワークグラフでは「女性」、「活躍」、「役職」、「力」といった単語の共起が観察された。これにより、報告書に記載されている企業の人的資本投資戦略では、女性の人材を育成し、活躍させることが重視されていることが示唆される。また、報告書においてステークホルダーが注目すべき点がより明確になったと考えられる。
