大地震の発生時において地震動特性の空間分布を迅速に把握することは，被災域における被害状況の推定において極めて重要である． 震源過程の十分な情報がない発災直後には，地震動特性の空間分布は観測データを内挿することによって震度や最大速度などの指標値の形で評価される． しかし，鉄道橋梁などの複雑な特性を有する構造物の詳細な被害評価や安全性判断のためには，指標値ではなく地震動波形を用いた動的な揺れの評価が望ましい一方で，そのような地震動波形の空間分布を発災直後に推定する手法は確立されていない． そこで本稿では，観測された地震動波形のウェーブレット変換を利用して，時間周波数領域におけるガウス過程回帰を行うことによって地震動波形の空間内挿を行う手法を提案し，過去の実地震記録を用いてその有効性を検証した結果を報告する．
