養殖業の効率改善や育成過程の最適化には,養殖生簀内で泳ぐ魚の体重を正確に把握することが重要である.例えば,養殖魚の給餌量は生簀中の生体量を基準に決定されることが多く,高精度な体重把握が過不足のない給餌量の設定につながる.体重把握の方法としては、魚へのダメージやストレスが少ない非接触型が望ましい.現在の主流は,水中ステレオカメラで計測された尾叉長と体高を特徴量として体重推定する方法であるが,より高い推定精度を実現するために,新たな特徴量の探索が行われている.そこで本研究では,日本の重要な養殖対象種であるブリを対象として,尾叉長,体高,新規特徴量候補12カ所の長さ,および体重を含む約10万尾分のデータセットを構築し,これを用いて体重推定モデルの精度向上に有益な特徴量を探索した.その結果,体重推定精度の向上に寄与する特徴量が複数見出された.とりわけ,尾叉長基準で吻端から70%位置の体高が重要であることがわかった.本特徴量を既存の体重推定モデルに追加することで,推定精度の向上が期待できる.さらに,見出された特徴量すべてをモデルに追加した場合,さらなる精度向上が期待できることも明らかになった.