近年,維持管理上の財政難に伴い,政府から民間へインフラ施設の委託の動きが進んでいる.加えて,長期かつ大規模なリスク引き受けが容易な機関投資家や基金の拡大も相まって,アセットクラスの1つとして,インフラへの投資(インフラ投資)が注目されている.インフラ投資は他のアセットクラスとのリターンの相関性が低いことや,インフレヘッジ効果を有することなどが特徴的であり,オルタナティブ資産として,特に海外でその規模が拡大している. 一方で,インフラ施設のプロジェクト期間は一般に長期であり,様々な不確実性が介在するために,その資産価値を正確に見積もることが容易でない.そのため,資産価値が契約者間の協議で定性的に決められる側面が強く,その価値の合理性を第三者的に判断することは困難である. 本研究では,アセットクラスとしてのインフラ投資の特徴的な性質であるインフラ施設の「劣化現象」を考慮することにより,投資意思決定情報の提供を目的とした資産価値評価手法を提案する.さらに,実際のインフラ施設のデータを対象として,提案する手法の有効性を実証的に分析する.