2016 年 2016 巻 63 号 p. 69-72
天敵昆虫アカメガシワクダアザミウマHaplothrips brevitubus (Karny) の放飼株から周辺株への分散性を果菜類4種 (イチゴ,ピーマン,ナス,キュウリ) について調べた。その結果,本種成虫は放飼後日数の経過とともに近接した周辺株へ移動したものの,放飼株からの分散性はあまり高くないことが示唆された。一方,本種の分散性は果菜類の種類によって異なり,イチゴやピーマンでは放飼株への高い定着性が認められたが,これらに比べてナスやキュウリでは近接株への速やかな移動が観察された。均一分布と仮定した密度になるまでの日数は,イチゴで最も長く,キュウリで最も短い傾向があった。放飼虫の残存率は,いずれの果菜類でも雄に比べて雌で高い傾向が認められた。以上の結果は,本種を生物的防除資材として利用する場合には,果菜類の種類ごとに放飼作業を検討し,数株あるいは株ごとに,雌の割合が高い状態で放飼する必要があることを示唆している。