生活環境での不慮の事故は,子供と高齢者の死因の上位を占めており,大きな社会問題となっている.本研究では,現在入手できる生活事故に関する大規模なデータベースを用いた疫学的評価を可能とし,さらに,生活空間内の物体およびそこでの行動を考慮可能とする新たな生活ベース・リスクアセスメント手法を提案した.また,提案手法の実現可能性を検証するためのプロトタイプシステムを構築した.構築したシステムは,事故データベース, スマートフォンや情報端末に搭載された3Dスキャン機能,RGBカメラの姿勢データを計測する機能, 様々なリスクを評価しリアルタイムおよび事後的に可視化する仮想空間表示機能から構成されるデジタルツイン・システムである.本研究では,傷害リスクの定量的評価のため,過去の事故データをもとにして,日常行動に随伴して物体によって引き起こされる傷害の重症度を評価する行動随伴重症度を新たに定義し,デジタルツイン・システムに実装した.模擬環境における検証実験により,異なる行動経路や異なる物体の配置などによる平均重症度の変化を評価可能であることを確認した.