2025 年 17 巻 1 号 p. 66-73
抗血小板薬2剤併用療法による消化管出血について,そのリスク増加や発現時期の傾向を,出血部位ごとに評価した研究はほとんどない.本研究では,日本国内の有害事象報告データベースを用いて,抗血小板薬2剤併用療法によるリスク増加と発現時期の傾向を評価した.有害事象自発報告データベースより上部消化管出血および下部消化管出血の症例を抽出し,アスピリンとP2Y12阻害薬の単剤群と併用群に分けて調整報告オッズ比を比較した.また,消化管出血発現までの日数を計算し,その分布から発現パターンを特定した.その結果,アスピリンとP2Y12阻害薬の併用は上部消化管出血の発現リスクを増加させる可能性が示唆され,上部消化管出血と下部消化管出血では異なる発現パターンが示唆された.これらの結果は,抗血小板薬2剤併用療法の施行時に,薬局薬剤師が計画的に消化管出血をモニタリングすることの重要性を示唆している.