動物分類学会誌
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日本産サンゴヤドリガニ類. : II.ヒメサンゴヤドリガニ属(新称)
武田 正倫田村 洋一
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1980 年 18 巻 p. 54-59d

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抄録

沖縄県八重山諸島石垣島で採集されたヒメサンゴヤドリガニ(新称)Pseudohapalocacinus ransoniの記載を行ない,その虫瘤gallに関する若干の知見を述べた。FIZE and SERENE (1955)により創設されたヒメサンゴヤドリガニ属Pseidohapalocarcinusは,サンゴヤドリガニ科Hapalocarcinidaeの模試属であるサンゴヤドリガニ属Hapalocarcinusと形態的にも生態的にも似ている部分が多い。両属とも1種ずつ,すなわち,よく知られたサンゴヤドリガニH. marsupialis STIMPSONとここに記録したヒメサンゴヤドリガニPs. ransom FIZE et SERENEからなる。ともに,石灰化の進んでいない丸みをおびた四角形の甲をもち,第1腹肢は二叉型で痕跡的な外肢を有する。しかし,サンゴヤドリガニの歩脚が細長く滑らかであるのに対し,ヒメサンコヤドリガニのそれは鋸歯縁と顆粒を備え,短くて太い。また,サンゴヤドリガニでは雌だけかヤサイサンゴ科Pocillopondaeのサンゴに虫瘤を作るのに対し,ヒメサンゴヤドリガニでは雌雄ともシコロサンゴ科AganciidaeのコノハシコロサンゴPavona frondiferaに虫瘤を作る。

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© 1980 日本動物分類学会
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