抄録
対馬の下島と上島の計24地点から得られた標本に基づいて,ナミウズムシの冠名亜種Dugesia japonica japonica ICHIKAWA et KAWAKATSUの交接器官の形態を記載した。対馬産の虫は陰茎突起部,特にその背唇部の基部に僅かな褶襞状構造が認められ,腹唇部の基部にもこの特徴が僅かに認められた。同様の構造は,韓国産・台湾産・鹿児島産・秋吉産・大山産・広島産・大阪産・伊豆半島産の標本にも認められている。下島の厳原産と上島の御岳産の虫の染色体を押しつぶし法で観察した結果,前者では2x=16,3x+1LB+SB=25+SB,3x+1LB+SB=25+SB&4x+2LB+SB=34+SB(異数性混在個体)を,後者では2x=16の核型を確認した。三倍性と四倍性の細胞を同一個体内に持つ虫の存在は,今回の例が最初の記録である。