動物分類学会誌
Online ISSN : 2189-728X
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北海道産ヒドロ虫Stylactaria uchidai(YAMADA, 1947), comb. nov.の再記載
並河 洋久保田 信馬渡 峻輔
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1990 年 42 巻 p. 2-9

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抄録

Stylactaria uchidai (YAMADA, 1947), comb. nov.を模式産地(室蘭)から新たに得た標本をもとに再記載した.栄養個虫,生殖個虫,そして触手状個虫の3種類の個虫が原記載どおり認められた.さらに,これら3種類の個虫すべてが必ず1群体中に存在し,個虫構成に群体間変異のないことが確かめられた.付着基に関しては,原記載で挙げられていた岩石とフジツボに加えて,今回新たに6種類の付着基が確認され,この種は付着基特異性を示さないことが判明した.原記載で図示されている棘は,ほとんどの群体で存在が確認されたが,ただ,チシマフジツボSemibalanus cariosus (PALLAS)の殼板上にある溝に棲息する群体では発見されなかった.個虫,生殖体,および刺胞などの形質をチシマフジツボ上から得られた合計79群体を用いて詳細を調査し,記載した.近縁種S. conchicolaとの形質の違いは以下の3点であった.1)S. uchidaiでは盃状のspadix上に1個の卵が存在する(S. conchicolaの雌の生殖体には円柱状のspadixをとりまいて数個の卵が存在する).2)S. uchidaiには3種類の個虫しか存在しない(S. conchicolaでは5種類の個虫が存在する.3)S. uchidaiには付着基特異性がない(S. conchicolaはエゾサンショウガイHomalopoma amussitatum上にのみ棲息する).

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© 1990 日本動物分類学会
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