1990 年 7 巻 3 号 p. 152-158
無核ブドウ‘ヒムロッド・シードレス’,‘モヌッカ’および‘無核白’の胚珠培養ならびに培養胚珠内部の解剖組織学的観察を行った. 胚珠内の胚発生には, 0.1%活性炭を添加した1/2MS液体培地 (3%ショ糖) が最適であった. 植物ホルモン (GA3, ABA, NAA, BA) の添加は胚発生をかえって抑制した. 胚珠培養による胚発生率は‘モヌッカ’,‘無核白’および‘ヒムロッド・シードレス’の順で高く, 開花後2~3週頃に植付けた場合が最もよかった. 胚は継代培養により正常な植物に生長した. 培養約4か月後の胚珠内部には胚の発生・分化が確認されたが, 胚乳, 珠心および珠皮組織の発育は認められず, 子葉を欠如した不完全な胚が多かった. 無核ブドウ育種のための胚珠培養の意義が論議された.