1990 年 7 巻 3 号 p. 170-176
コムギの未熟胚培養の効率化をはかるため, カルス誘導培地中の植物生長調整物質の改変が器官形成に及ぼす効果について検討した. 未熟胚の直接発芽は2, 4-D濃度の減少とカイネチン濃度の増加に伴ってかなり促進されたが, ABAの添加によって著しく抑制された. いずれの植物生長調整物質添加もカルスの形成率にはほとんど影響しなかったが, 2, 4-Dの濃度を下げるか, 低濃度のABAを加えることによってカルスの増殖が促進された. 一方, 2, 4-Dの濃度変化は再分化率には大きな影響を及ぼさなかったが, 低濃度区での再分化植物体の発育を明らかに促進した. 再分化能の高い品種では, 再分化率に対するカイネチンの添加効果はみられなかったが, 再分化能の低い品種ではKNの添加によって再分化率が顕著に向上した. また, 低濃度のABA添加によって旺盛な植物体再分化が認められた.