PLANT MORPHOLOGY
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学会賞受賞者ミニレビュー
特異な形態をもつ水生被子植物カワゴケソウ科の適応進化
藤浪 理恵子
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2014 年 26 巻 1 号 p. 65-70

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抄録

カワゴケソウ科は熱帯・亜熱帯地域の急流中の岩上に生育する水生被子植物である.常に激流にさらされる極限環境に適応したため,特異な形態を進化させている.科内の大半を占めるカワゴケソウ亜科のシュートは茎頂分裂組織の構造が欠失し,茎がなく葉が扁平な根から不定的に形成される.一方,祖先的なトリスティカ亜科は一般のシュート構造に近い体制をもつことから,他の被子植物からカワゴケソウ科への形態進化解明の鍵を握ると考えられる.発生解剖学的にトリスティカ亜科のシュートの体制を解析した結果,側軸が腋外芽として形成された後,主軸の成長が停止する,一般の被子植物がもつ仮軸分枝の体制を示すことが明らかとなった.したがって,カワゴケソウ科は進化の初期段階に仮軸分枝の体制を獲得したと推定される.また,超微構造学的解析により,カワゴケソウ亜科の表皮細胞に大小二形の葉緑体をもつという新規の報告がなされた.葉緑体二形性はカワゴケソウ科が特殊環境に適応するために獲得した形態であると考えられる.本稿では,カワゴケソウ科のシュート形態進化とユニークな葉緑体二形性の特徴から本科の適応進化について考察したい.

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© 2014 日本植物形態学会
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